10月29日は「世界脳卒中デー」― 脳卒中は時間との闘い。大切な命と未来を守るために
やまな脳神経クリニック|脳卒中予防・早期発見コラム|2026年10月
毎年10月29日は「世界脳卒中デー(World Stroke Day)」です。
脳卒中はある日突然発症し、命を脅かすだけでなく手足の麻痺や言葉の障害など、その後の生活に大きな影響を及ぼすことがある病気です。
しかし、脳卒中は日頃の生活習慣や病気の管理によって発症リスクを減らすことができ、万が一発症しても早期に適切な治療を受けることで後遺症を軽減できる可能性があります。
2026年の世界脳卒中デーでは、「Every M1nute Counts(1分1秒が大切)」というメッセージが発信されています。
今回は脳卒中から大切な命と健康を守るために、ぜひ知っていただきたいことをご紹介します。
1.脳卒中とは? 突然起こる脳の病気
脳卒中とは脳の血管が詰まったり、破れたりすることで、脳の機能が障害される病気の総称です。
主に次の3つの種類があります。
① 脳梗塞
脳の血管が血栓などで詰まり、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。動脈硬化や心房細動などが原因になります。
② 脳出血
脳の内部にある血管が破れ、出血する病気です。高血圧などが主な危険因子で、出血によって脳の組織が傷つきます。
③ くも膜下出血
脳の表面にある血管の動脈瘤などが破れ、くも膜下腔に出血する病気です。突然の激しい頭痛で発症することが多く、命に関わる場合があります。
これらに共通するのは、できるだけ早く適切な医療機関で診断・治療を受けることが重要だという点です。
2.こんな症状が出たら要注意!「BE-FAST」を覚えましょう
脳卒中は前触れなく突然発症することがあります。
代表的な症状を覚えるための合言葉が「FAST」です。さらに、ふらつきや視覚障害を加えた「BE-FAST(ビー・ファスト)」も役立ちます。
すぐに119番!
突然の症状は、迷わず119番へ!
特に、突然の激しい頭痛、片側の手足の麻痺、言葉の異常、急な視力障害、歩けないほどのふらつきなどが出現した場合は、救急車を呼んでください。自分で運転して受診することは避けましょう。
なお、BE-FASTに当てはまらない脳卒中もあります。突然の異常が現れたときは、自己判断せず救急評価を受けることが大切です。
3.なぜ脳卒中は「時間との闘い」なのか?
脳梗塞では血管が詰まることで脳への血流が不足し、時間が経つにつれて脳細胞に障害が広がっていきます。
そのため発症から治療開始までの時間が非常に重要です。
脳梗塞の治療には、血栓を溶かす薬を点滴する「血栓溶解療法(rt-PA静注療法)」や、カテーテルを使って血栓を取り除く「機械的血栓回収療法」などがあります。
| 治療法 | 主な治療対象・時間の目安 |
|---|---|
| rt-PA静注療法 | 原則として発症から4.5時間以内の適格な脳梗塞患者 |
| 機械的血栓回収療法 | 主に太い血管が閉塞した脳梗塞。条件によっては発症から最大24時間まで検討される場合がある |
ただし、これらの治療はすべての患者さんに実施できるわけではありません。画像検査や全身状態などをもとに、専門医が適応を判断します。
「まだ様子を見ても大丈夫」「少し休めば治るだろう」という判断が、治療の機会を失うことにつながる可能性があります。
症状が消えても安心できません
数分から短時間で症状が改善する「一過性脳虚血発作(TIA)」という病気があります。
TIAは脳梗塞の前触れとなることがあり、その後脳梗塞を発症する危険性があります。
症状が完全に消えても、その場で救急評価を受けることが重要です。
4.脳卒中は予防できる? 大切なのは危険因子の管理
脳卒中は年齢や体質だけで決まる病気ではありません。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙など、治療や生活習慣の改善によって管理できる危険因子があります。
特に重要なのが高血圧です。
高血圧は脳梗塞にも脳出血にも関係するため、普段から血圧を把握し、適切に管理することが脳卒中予防の基本となります。
今日からできる7つの脳卒中予防
① 血圧を測定する
家庭でも定期的に血圧を測り、高い状態が続く場合は医師に相談しましょう。
② 塩分を控え、バランスのよい食事を心がける
野菜や魚などを取り入れ、塩分や過剰なカロリー摂取を見直しましょう。
③ 適度な運動を続ける
無理のないウォーキングなどを生活に取り入れ、継続することが大切です。
④ 禁煙する
喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化や脳卒中のリスクを高めます。
⑤ 飲酒量を見直す
過度の飲酒を避け、飲酒習慣を見直しましょう。
⑥ 持病を適切に治療する
糖尿病、脂質異常症、心房細動などを放置せず、処方された薬を自己判断で中断しないようにしましょう。
⑦ 健診・検査を活用する
血圧、血糖、脂質、不整脈などを定期的に確認し、必要に応じて専門医に相談しましょう。
「症状がないから大丈夫」と考えず、日頃から危険因子を管理することが、将来の脳卒中予防につながります。
5.MRI・MRA検査でわかること ― 症状がなくても脳に異常がある?
脳卒中の中には明らかな自覚症状がないまま、脳の血管や組織に変化が生じている場合があります。
MRI・MRA検査はそうした異常を調べるうえで役立つ検査です。
| 検査で確認できること | 内容 |
|---|---|
| 無症候性脳梗塞 | 自覚症状がないまま生じた脳梗塞の痕跡 |
| 脳白質病変 | 加齢や高血圧などに関連することがある脳の変化 |
| 脳微小出血 | 小さな出血の痕跡で、脳小血管病の評価に役立つ |
| 脳動脈瘤 | くも膜下出血の原因となることがある血管のこぶ |
| 脳血管の狭窄・閉塞 | 脳の血管が細くなったり、詰まったりしている状態 |
こうした異常を把握することで、血圧や生活習慣の管理を見直すきっかけになる場合があります。
注意:MRI検査を受ければすべての脳卒中を予測・予防できるわけではありません。また、症状のないすべての方に定期的なMRI検査が必要というわけでもありません。検査の必要性は年齢、既往歴、家族歴、危険因子などを踏まえて判断します。
脳卒中が疑われる急な症状がある場合は、通常の脳ドックや外来予約を待たず、救急医療機関で評価を受けてください。
6.世界脳卒中デーをきっかけに、ご自身とご家族の健康を見直しましょう
日本脳卒中協会では毎年10月を「脳卒中月間」として、脳卒中の予防や早期受診の重要性を広く伝えています。
2026年度の標語は、「脳卒中 つける知識が 特効薬」です。
脳卒中の症状を知っているだけでも、ご自身やご家族が発症したときの適切な行動につながります。
この機会にご家庭でも脳卒中の初期症状や119番通報の重要性について話し合ってみてはいかがでしょうか。
7.やまな脳神経クリニックからのメッセージ
脳卒中は突然起こる病気ですが、その危険因子の多くは日頃から管理することができます。
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの管理に加え、ご自身の脳や血管の状態を知ることも、健康を考える大切なきっかけとなります。
当院では脳神経疾患に関する診療を通じて、脳卒中の予防や早期発見につながる健康管理を大切にしています。
「血圧が高いと言われた」「家族に脳卒中になった人がいる」「脳の健康状態が気になる」といった方は、症状や危険因子に応じた検査・診療についてお気軽にご相談ください。
ただし、急な麻痺、言葉の異常、激しい頭痛などが現れた場合は、当院への通常受診よりも救急搬送を優先してください。
脳卒中を防ぐために、今日からできることを。
そして、万が一のときには迷わず行動を。
10月29日の世界脳卒中デーが、ご自身と大切な人の健康を守るきっかけになれば幸いです。
よくあるご質問(FAQ)
Q.脳卒中は若い人でも起こりますか?
はい。脳卒中は高齢者に多い病気ですが、若い方でも発症します。高血圧、糖尿病、喫煙などのほか、心臓病や血管の異常などが関係する場合があります。
Q.症状が数分で治った場合も受診が必要ですか?
はい。症状が短時間で改善しても、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があります。その後に脳梗塞を発症する危険があるため、直ちに救急評価を受ける必要があります。
Q.頭痛があれば脳卒中の可能性がありますか?
頭痛の多くは脳卒中以外の原因によるものです。しかし、突然発症したこれまでに経験したことのない激しい頭痛は、くも膜下出血などの可能性があるため救急受診が必要です。
Q.脳ドックを受ければ脳卒中を予防できますか?
脳ドックは、脳や血管の異常を発見するための検査です。検査そのものが脳卒中を予防するわけではありませんが、異常の発見をきっかけに適切な管理や治療につなげられる場合があります。
Q.脳卒中の予防で最も重要なことは何ですか?
特に重要なのが血圧の管理です。高血圧に加え、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙などの危険因子を適切に管理することが大切です。
参考資料
※本記事は一般的な医療情報を提供するもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。脳卒中が疑われる急な症状がある場合は、直ちに119番通報してください。






