頭痛
頭痛
頭痛の原因は患者様によって様々ですが、重要なことは、その頭痛の原因が生命に危険性があるかどうかを見極めることです。
頭痛外来では、頭痛に関して(発生時期、痛みの持続期間、頻度、痛み方など)、詳しく問診を行い、必要な場合は MRI検査を実施し、その頭痛が一時性頭痛なのか二次性頭痛なのかを総合的に診断いたします。
大部分の頭痛には有効な治療法が存在しますので、患者さんのお話をお聞きし、適切な治療・生活改善のアドバイスを行います。
エムガルティ(片頭痛治療薬)
新しい片頭痛治療薬「エムガルティ(一般名 ガルカネズマブ)」が当院で使用可能になりました。
◎エムガルティについて
1. 抗CGRP抗体製剤(ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤)です。
2. CGRP(カルシトニン遺伝関連ペプチド)という物質は、頭蓋骨にある硬膜や三叉神経に分布しており、片頭痛発作時の血管拡張や炎症反応の直接の原因とされています。エムガルティはこのCGRPの働きをブロックすることで、発作を減らし、発作の程度も減少させるとされています。
3. CGRPを抑制する機序としては国内初で、片頭痛薬としても20年ぶりの新薬です。
4. 月1回注射する注射タイプの片頭痛「予防薬」です。発作回数を減らすだけでなく、発作時の痛みを軽減する効果もあるため、画期的な治療薬として注目されています。
5. 注射薬のため、月1回の通院が必要ですが、毎日の内服は必要ありません。
6. 臨床試験によると、6ヶ月の使用で片頭痛の日数が減った人の割合は
50%減少:59%
75%減少:33%
100%減少:11%
でした。
片頭痛発作がゼロになったひとの割合が10%以上いるのは注目です。
◎当院でのエムガルティ治療
1. 当院で片頭痛治療を受けられている方は直接外来でご相談ください。
2. 当院のMRIで異常所見がないことを確認できれば、かかりつけでなくても治療は可能です。
3. 最適使用推進ガイドライン(厚生労働省)を遵守するため、以下の条件が必要です。
・医師に片頭痛と診断されていること
・片頭痛が過去3ヶ月の間で平均して4回/月以上あること
・従来の片頭痛予防薬の効果が不十分または内服継続が困難な方
・18歳未満は使用不可
◎実際の投与手順について
1. 初回は2本注射し、翌月から毎月1本注射します。
2. 注射部位は、お腹、太もも、腕、お尻のいずれかです。
3. 医師または看護師が皮下注射を行います。
4. まずは3ヶ月投薬を続け、効果を判断します。(効果がなければ中止を考慮します)
◎費用について
1. 保険適応です。3割負担の方で1本12,800円(初回は2本のため25,610円 ※2023年6月に薬価改定)となります。
2. その他、通常の再診料や注射処置料などがかかります。
◎副作用について
1. 注射薬のため、投与した部位に痛みや腫れが出現することがあります。多くの場合注射したその日に出現し、数日で消失します。(注射部位疼痛 10.1%、注射部位の腫れ 14.9%)
2. その他、めまいや便秘、じんま疹の報告もありますが、いずれも1%未満です。
◎エムガルティの案内サイト
製薬会社が制作・公開しているサイトです。
https://www.emgality-patient.jp/
片頭痛予防薬に新薬が登場しました (アジョビ、アイモビーグ)
これまで片頭痛予防の注射薬はエムガルティのみでしたが、2021年8月から新たに2種類の片頭痛予防注射薬が使用可能になりました。
☆アジョビについて
片頭痛の原因に関与しているとされるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に結合することで、三叉神経系の活性化を抑制すると考えられています。
2018年にアメリカ、2019年ヨーロッパで認可され、2021年6月に本邦でも承認されました。
◎アジョビの特徴
・ライフスタイルに合わせた2つの投与方法(4週間ごとに1本あるいは12週間ごとに3本皮下注射)が選択できます。
・片頭痛予防薬内服の有無にかかわらず、片頭痛の日数が減少します。
・反復性片頭痛、慢性片頭痛ともに、片頭痛日数が初回投与1週目から減少します。
◎使用方法
①4週間おきに1回1本あるいは12週間おきに1回3本の皮下注射を行います。
②注射部位はお腹、太もも、腕のいずれかです。
③まずは3ヶ月注射を続け、効果判定を行います。
◎費用
保険適応です。3割負担の方で1本11,730円(2023年6月に薬価改定)となります。
◎副作用について
主な副作用としては、注射部位反応(痛み、腫れ、かゆみなど)が報告されています。
☆アイモビーグについて
慢性片頭痛予防薬の新薬である「アイモビーグ皮下注 70mgペン」(一般名;エレヌマブ)が承認されました。
注射薬という点ではエムガルティと同じですが、作用機序は異なります。
◎機序
片頭痛の原因とされるCGRP(カルシトニン関連ペプチド)は、頭痛発作時に多く出現する物質です。アイモビーグはCGRPを必要な分だけ取り込む受け皿(受容体)に蓋をすることで、片頭痛発作を抑えることができます。
◎効果
①片頭痛の発作回数の減少
②発作時の内服薬の減少
③片頭痛による痛み、日常生活への影響が軽減
◎アイモビーグの特徴
・片頭痛患者様における64週後の片頭痛日数50%減少率は64.8%
・海外で先行発売されており、5年の長期投与試験により安全性が確認されている
・抗体製剤の中でも、アレルギー反応や効果減弱が少ないとされる「完全ヒト化」製剤
・初回から1本の注射でOK
◎使用方法
①4週間に1回皮下注射を行います。
②注射部位はお腹、太もも、腕のいずれかです。
③まずは3ヶ月注射を続け、効果判定を行います。
◎費用
保険適応です。3割負担の方で1本11,690円(2023年6月に薬価改定)となります。
◎副作用について
主な副作用としては、便秘や注射部位反応(痛み、腫れなど)、傾眠などが報告されています。
いずれも当院で使用可能となりましたので、お気軽にご相談ください。